デミタスカップとは？エスプレッソカップとの違いや選び方、使い分け方を解説

エスプレッソを注文すると出てくる小さめのカップ。実は「デミタスカップ」と「エスプレッソカップ」という2種類があるのをご存知でしょうか？一見似ているように見えるこの2つには、実は大きな違いがあります。

この記事では、デミタスカップの基礎知識から選び方、使い分けまで詳しく解説していきます。

デミタスカップとは

小さくて可愛らしいデミタスカップは、コーヒーを楽しむための特別なカップとして知られています。実はその歴史には、ヨーロッパでのコーヒー豆不足という背景があります。

コーヒーへの情熱から生まれたこのカップについて、詳しく見ていきましょう。

名前の由来

デミタスカップの名前は、フランス語で「半分」を意味する「デミ(demi)」と「カップ」を意味する「タス(tasse)」を組み合わせた言葉です。

18世紀初頭、ヨーロッパではフランス植民地からのコーヒー豆輸出が規制され、深刻な豆不足に陥りました。その中でイタリアのカフェ「カフェ・グレコ」のオーナーが、品質を落とさずにコーヒーを提供するため、通常の半分サイズのカップを考案。

これが現在のデミタスカップの始まりとされています。当時の苦労と工夫から生まれた知恵が、今では洗練されたコーヒーカップとして世界中で愛されているのです。

特徴

デミタスカップの最も重要な特徴は、一般的なカップの半分程度という容量ですね。

60〜90mlという量は、エスプレッソはもちろん、トルココーヒーや濃いめのレギュラーコーヒーなど、様々な種類のコーヒーを楽しむのにぴったり。また、厚めの陶器や磁器で作られることが多く、少量のコーヒーでも温度を保ちやすいよう工夫されています。

さらに、多くの場合ソーサー（受け皿）が付属しており、スプーンやシュガーを添えやすく、見た目にも優雅な雰囲気を演出できます。この完璧なバランスと機能性が、デミタスカップの魅力となっているのです。

エスプレッソカップとの違い

エスプレッソカップとデミタスカップは、一見すると似ているように見えますが、実は重要な違いがあります。

エスプレッソカップは20〜50mlと更にコンパクトで、底部が丸みを帯びた「エッグシェイプ」と呼ばれる形状が特徴です。この形状により、エスプレッソ特有のクレマ（泡）が立ちやすく、また砂糖を入れた際の撹拌もしやすくなっています。

一方デミタスカップは、より汎用性を重視した設計で、様々なコーヒーに対応できます。つまり、エスプレッソカップが「専用工具」だとすれば、デミタスカップは「マルチツール」といえるでしょう。

エスプレッソ用カップの種類

コーヒーを楽しむためのカップは実に様々な種類があり、それぞれに独自の特徴や用途があります。エスプレッソを美味しく飲むためのカップから、普段使いに便利なものまで、目的に応じて選べる多彩なラインナップを見ていきましょう。

マグカップ

マグカップは家庭で最も親しまれているコーヒーカップの一つです。

一般的に200〜300mlの大容量で、取っ手が大きく持ちやすいのが特徴です。最近ではスターバックスなどのカフェチェーンでも採用され、カジュアルなコーヒータイムの定番。保温性に優れ、たっぷりとコーヒーを楽しめることから、在宅ワークの増加とともに需要が高まっています。

また、デザインの種類も豊富で、自分らしさを表現できるアイテムとしても人気があります。保温効果を高めた二重構造のものや、電子レンジ対応の便利なタイプなど、進化を続けているのも特徴的です。

カプチーノカップ

カプチーノカップは、カプチーノやカフェラテなどミルクを使ったコーヒーを美しく魅せるために開発された専用カップです。

容量は180ml前後が一般的で、上部が広がったボウル型の形状が特徴です。この形状により、エスプレッソとスチームミルクの層を美しく表現でき、ラテアートも映えます。

また、ミルクの泡立ちを保ちやすく、適度な厚みで保温性も確保。持ち手は大きめで、温かい飲み物でも持ちやすいよう設計されています。最近では、透明なガラス製のものも人気で、層の美しさを視覚的に楽しむこともできます。

タンブラー

タンブラーは、持ち運びに特化した現代的なコーヒーカップです。

ステンレスやプラスチック製で、真空断熱構造により優れた保温・保冷効果を発揮。一般的な容量は350〜500mlで、密閉性の高い蓋付きが特徴です。

近年の環境意識の高まりとともに、使い捨てカップの代替として注目を集めています。デザイン性も高く、ブランドのロゴや好みのアートワークが施されたものも多数。さらに、食洗機対応や衝撃に強い素材の採用など、実用性を重視した進化も続いています。

レギュラーカップ

レギュラーカップは、一般的なドリップコーヒーを楽しむため標準的なコーヒーカップです。

容量は150ml前後で、一般的なドリッパーからの抽出量にぴったり合うように設計されています。形状は底から口に向かってなだらかに広がり、コーヒーの香りを楽しめるよう配慮されています。多くの場合、ソーサーが付属し、コーヒースプーンや角砂糖を添えるスペースも確保。

カフェや喫茶店でもっともよく見かけるカップで、家庭でも使いやすく、来客時のおもてなしにも適しています。最近では、保温性を高めた二重構造のものや、様々なデザインのものも登場し、選択肢が広がっています。

エスプレッソカップ

エスプレッソカップは、30mlほどのエスプレッソを最高の状態で楽しむために開発された専用カップです。

底部が丸みを帯びたエッグシェイプ型で、この形状によってエスプレッソ特有のクレマ（泡）がきれいに立ち、風味を逃さず保てます。カップの厚みも特徴的で、急速抽出されたエスプレッソの温度をしっかりと保温。取っ手は小さめですが、少量のコーヒーに最適なバランスで設計されています。

また、多くの高級ブランドが独自のエスプレッソカップを展開しており、エスプレッソを飲む際の楽しみが味わえます。プロのバリスタたちも、このカップでこそエスプレッソの真価を味わえると評価しています。

デミタスカップの選び方とは

デミタスカップを選ぶ際は、デザインや素材、サイズなど、様々な要素を考慮する必要があります。自分好みのカップで飲むコーヒーは格別の美味しさです。

ここでは、失敗しない選び方のポイントを詳しく解説していきます。

デザインで選ぶ

デミタスカップのデザインは、コーヒータイムの雰囲気を大きく左右する重要な要素です。

北欧風の洗練されたシンプルなものから、クラシカルな装飾が施されたものまで、実に多様なデザインが存在します。特に近年人気なのが、日本の伝統技法を活かした有田焼や九谷焼のデミタスカップです。

また、ソーサーとのコーディネートも重要で、セットで統一感のあるデザインを選ぶと、より上質な雰囲気を演出できます。カップの縁の処理や取っ手の形状なども、使い心地に直接影響するため、実際に手に取って確認することをおすすめします。デザイン選びは、使用するシーンを想像しながら行うことが大切です。

素材で選ぶ

デミタスカップの素材選びは、使い心地と味わいに大きく影響します。

一般的な磁器は、熱伝導率が低く保温性に優れているため、少量のコーヒーを楽しむのにぴったり。また、陶器は独特の風合いと手作り感があり、コーヒーの味わいに深みを与えてくれます。

最近注目を集めているのが二重構造の耐熱ガラスで、コーヒーの層や色合いを視覚的に楽しめる上、優れた保温効果も特徴です。ステンレス製は保温性と耐久性に優れていますが、金属特有の味わいが気になる場合もあります。

素材それぞれに特徴があるため、自分の好みや使用目的に合わせて選びましょう。

ブランドやメーカーで選ぶ

コーヒーカップの老舗ブランドは、長年の経験と技術を活かした信頼性の高い製品を提供しています。

例えば、ロイヤルコペンハーゲンやウェッジウッドといった高級ブランドは、伝統的な技法と現代的なデザインを融合させた魅力的なデミタスカップを展開しています。

日本のメーカーでは、ノリタケやナルミといった老舗窯元が、日本の繊細な技術を活かした製品を生み出しています。また、最近では北欧デザインのブランドも人気で、シンプルでモダンな製品が注目を集めています。

ブランド選びでは、その歴史や製品への評価、アフターサービスなども考慮に入れると良いでしょう。

価格で選ぶ

デミタスカップの価格帯は、素材や製法、ブランドによって実に幅広く展開されています。

1,000円程度の手頃な価格のものから、数万円する高級品まで、予算や用途に応じて選択できます。

普段使いなら3,000円前後の製品がコストパフォーマンスに優れており、耐久性も十分です。一方、来客用や特別な時間のために使うなら、5,000円以上の上質な製品を選ぶのもおすすめです。職人の手作業による伝統工芸品は高価格帯になりますが、その価値に見合う満足感が得られます。

予算を決める際は、使用頻度や目的、セット購入の必要性なども考慮に入れましょう。

サイズで選ぶ

デミタスカップのサイズ選びは、主にどんなコーヒーを楽しむかによって決めると良いでしょう。

エスプレッソを主に飲む場合は60ml前後、トルココーヒーややや濃いめのレギュラーコーヒーを楽しむなら80〜90ml程度がおすすめです。また、カップの高さや口径も重要な要素です。

高さのあるタイプは見栄えが良く、口径の広いものは香りを楽しみやすいという特徴があります。収納スペースも考慮に入れ、食器棚にスッキリ収まるサイズを選ぶと実用的です。

複数のサイズを揃えることで、気分や用途に応じて使い分けることも。

デミタスカップの上手な使い分け方法

お気に入りのデミタスカップを用途に応じて使い分けることで、コーヒーの楽しみ方がさらに広がります。

ここでは、シーンに合わせた上手な活用法をご紹介します。おもてなしから普段使いまで、様々な場面で活用できるヒントをお伝えしましょう。

お客様に提供する時はソーサー付きのカップを使う

おもてなしの場面では、ソーサー付きのデミタスカップを選ぶことで、より丁寧な印象を演出できます。

高級レストランやホテルでも採用されているこの提供スタイルは、コーヒーをより優雅に楽しむための工夫が詰まっています。ソーサーは単なる受け皿以上の役割があり、スプーンや角砂糖を添えるスペースとしても活用可能。

また、コーヒーを飲む際の適度な距離感を保つアイテムとしても重宝します。特別な来客時には、カップとソーサーの柄を統一し、小さなクッキーやチョコレートを添えると、より心のこもったおもてなしを演出できます。

温度を重視する場合は保温性の高いカップを使う

コーヒーの風味を長く楽しむためには、適切な温度管理が欠かせません。

少量のコーヒーは冷めやすいため、保温性の高いカップを選ぶことが重要です。二重構造の耐熱ガラスや、厚手の陶磁器製のカップは、優れた保温効果を発揮します。特に寒い季節は、カップを予め温めておくことで、より長く適温を保てますよ。

また、カップの形状も保温性に影響を与えます。口径が狭く、深みのあるデザインのものは、熱が逃げにくく、香りも楽しめるため、一石二鳥です。普段使いでは、保温性を重視したカップ選びがおすすめです。

気分を上げたいときは好みのデザインを使う

自分だけの特別な時間を演出するなら、お気に入りのデザインのカップを使いましょう。

北欧デザインのシンプルなものや、アンティーク調の華やかなもの、和モダンな味わいのあるものなど、その日の気分に合わせて選べます。

また、季節感のあるデザインのカップを使うことで、より豊かなコーヒータイムを演出できます。例えば、春は桜柄、秋は紅葉柄など、季節を感じられるデザインを取り入れると、より心が癒されます。

SNSに写真を投稿する際も、デザイン性の高いカップならより映える一枚が撮れるでしょう。

デミタスカップでエスプレッソをおいしくいただこう

デミタスカップは、その歴史と共に進化を続けてきた魅力的なコーヒーカップです。エスプレッソカップとは異なる特徴を持ち、より汎用性の高い使い方ができます。

選び方のポイントを押さえ、シーンに合わせて使い分けることで、コーヒーの楽しみ方がさらに広がるでしょう。ぜひお気に入りのデミタスカップを見つけて、豊かなコーヒータイムを楽しんでください。