【飲食業】食品衛生責任者とは？役割やメリット、資格の取り方などを解説

近年、食の安全性がますます重視される中、飲食店や食品を取り扱う施設には必ず「食品衛生責任者」を置くことが法律で定められています。この資格があれば飲食店を開業でき、キャリアアップにもつながります。

この記事では、食品衛生責任者の役割やメリット、資格の取得方法までを解説します。

食品衛生責任者とは

私たちが安心して食事を楽しめるのは、食品衛生責任者の存在があるからです。食中毒の予防から従業員の衛生教育まで、食の安全を守るために重要な役割を担っています。

まずは、食品衛生責任者の概要を説明します。

役割

食品衛生責任者は店舗の衛生管理のリーダーとして、食の安全を守る重要な立場にあります。

具体的な役割としては、施設の衛生管理計画の作成と実施、従業員への衛生教育、食材の適切な取り扱い方法の指導などがあります。食中毒予防のための温度管理や、調理器具の洗浄・消毒方法の確認、従業員の健康管理なども重要な仕事です。

また、営業者に対して衛生管理に関する改善点を提案する役割も担っており、お店全体の衛生レベルを向上させる責任者として機能します。

食品衛生管理者との違い

食品衛生管理者は、肉や魚、乳製品などの特に衛生管理が必要な食品を製造・加工する工場で必要となる国家資格です。

一方、食品衛生責任者は飲食店など一般的な食品営業施設で必要な資格で、講習を受ければ誰でも取得できます。食品衛生管理者は食品衛生責任者を兼ねることが可能ですが、その逆はできません。管理者の方が取得条件も厳しく、より専門的な知識が求められます。食品衛生責任者は、一日の講習で資格を取得できる手軽さが特徴です。

食品衛生責任者資格を取る3つのメリット

食品衛生責任者の資格は、飲食店の開業に必須なだけでなく、様々なメリットがあります。食品衛生の専門知識が身につき、HACCPに沿った衛生管理もできるようになります。

ここでは資格取得で得られる3つの具体的なメリットを解説します。

飲食店の開業ができる

食品衛生責任者の資格を持っていれば、飲食店を開業する際に別途資格保持者を探す必要がありません。開業時には必ず食品衛生責任者の設置が必要なため、自身が資格を持っていることで開業準備をスムーズに進められます。また、資格取得時に学んだ衛生管理の知識は、開業後の店舗運営にも直接活かせるだけでなく、安全な食事の提供につながります。

食品衛生の知識が深まる

資格取得のための講習では、食中毒予防や衛生的な食材の取り扱い方、施設の衛生管理など、食の安全に関する幅広い知識を学ぶことが可能です。

この知識は、日々の調理や食材管理に直接活かせるだけでなく、従業員への指導にも役立ちます。また、定期的な講習会への参加により、最新の衛生管理の知識や技術を継続的に習得できるのも大きなメリットです。

HACCPに沿って衛生管理ができる

食品衛生法の改正により、すべての食品事業者にHACCPに沿った衛生管理が義務付けられています。

食品衛生責任者の講習では、このHACCPの基本的な考え方や実践方法について学べます。具体的には、重要管理点の設定方法や、記録の付け方、従業員への指導方法など、実践的な知識を身につけることが可能です。法令に準拠した適切な衛生管理体制を構築できます。

HACCPとは

事業者が食の安全を確保するために、入荷や出荷の段階から食品を管理する手法

食品衛生責任者資格の取り方

食品衛生責任者の資格は、1日の講習で取得できる身近な資格です。受講資格は17歳以上で、特別な予備知識も必要ありません。

次に、資格取得に必要な受験資格から申し込み方法、講習内容、試験についてまで詳しく解説します。

受験資格

食品衛生責任者の資格を取得するには、17歳以上（高校生は除く）であることが条件です。学歴や経験は問われませんが、日本語で講習を理解できることが必要です。

すでに栄養士、調理師、製菓衛生師などの資格を持っている方は、講習を受けなくても食品衛生責任者になれます。外国籍の方は、在留カードまたは特別永住者証明書が必要となります。

申し込み方法

申し込み方法は、各都道府県の食品衛生協会によって異なりますが、一般的には以下の手順で行います。

まず、食品衛生協会のホームページから申込書をダウンロードし、必要事項を記入します。次に、返信用封筒と一緒に食品衛生協会へ郵送しましょう。

受付完了後、協会から受講票が送られてきます。オンラインでの申し込みが可能な地域もあるので、最寄りの食品衛生協会に確認するとよいでしょう。

受講詳細

講習は通常1日で完了し、食品衛生学、公衆衛生学、食品衛生法について学びます。具体的な時間配分は、食品衛生学が2時間30分、公衆衛生学が30分、食品衛生法が3時間程度です。講習の最後には理解度を確認するテストがあります。

受講料は地域によって異なりますが、およそ1万円から1万5千円程度です。講習終了後、合格者には修了証が交付されます。なお、この資格に有効期限はありませんが、定期的な更新講習の受講が推奨されています。

食品衛生責任者資格を取るべき人

食品衛生責任者の資格は、飲食店の経営者や従業員だけでなく、食品業界で活躍したい方全員におすすめの資格です。ここでは、特にこの資格が必要な職種や、取得をお勧めする方について具体的に解説します。

飲食店経営を考えている人

飲食店の開業を考えている方にとって、食品衛生責任者の資格は必須です。

開業前に資格を取得しておくことで、スムーズに開業準備を進めることが可能です。また、資格取得時に学ぶ衛生管理の知識は、安全な店舗運営に直接活かせます。将来的に独立開業を考えている方は、早めに取得しておくことをおすすめします。

食品衛生の知識を深めたい人

飲食業界で働く方や、これから働きたいと考えている方にとって、食品衛生の知識は非常に重要です。

食品衛生責任者の資格を取得することで、食中毒予防や衛生管理について体系的に学べます。この知識は、日々の業務における食材管理や調理場の衛生管理に直接活かせるため、キャリアアップにもつながります。

キャリアアップしたい人

飲食業界でのキャリアアップを目指す方にとって、食品衛生責任者の資格は大きな武器となります。

この資格があることで、店舗の衛生管理責任者として重要な立場に就けるため、より良い待遇や昇進のチャンスにつながります。また、資格取得を通じて得られる知識は、実務能力の向上にも役立ち、より専門的な立場での活躍が期待できます。

職業上必要な人

飲食店の店長や管理職、食品製造業の現場責任者など、職務上食品衛生責任者の資格が必要な方は多くいます。また、新規出店時に必要となることも多いため、チェーン店やフランチャイズの店舗運営に関わる方にとっても重要な資格です。

食品関連の仕事に就いている方や、これから就職を考えている方は、キャリアの選択肢を広げるためにも取得を検討するとよいでしょう。

食品衛生責任者資格を取得しよう

食品衛生責任者の資格は、食の安全を守る重要な役割を担う一方で、比較的取得しやすい資格です。講習は1日で終わり、特別な予備知識も必要ありません。

飲食店の開業を考えている方はもちろん、食品業界でのキャリアアップを目指す方にとっても、大きなメリットのある資格といえます。まずは最寄りの食品衛生協会に問い合わせて、具体的な取得手順を確認してみましょう。食の安全を支える専門家として、あなたも食品衛生責任者を目指してみませんか。